研究とは何でしょうか。もちろん多くの皆さんは「物事について深く考えたり調べたりして真理を明らかにすること」と正しく知っている思います。しかし、大学での研究はちょっと意味が違います。真理を探るという側面では同じかもしれませんが、大学は学生を成長させる場であるように、大学での研究は学生の能力を高めるという目的ももっています。高校までの教育は与えられたものを学生がそのまま吸収すればいいものでした。それが大学になると変わります。決まった参考書もないし、国が決めた横並びの規定もないし、一人の力で勉強することを強いられます。それが研究となるともう一段とレベルが高くなります。自分の力で調べて、学習して、工夫して、新しい提案をするのが研究です。
文系と違って理工系の学生は研究は特に大事です。企業が求めているのも実は勉強ができる人材ではなく、研究ができる人材です。勉強ができて成績がいい人はそれなりの評価が得られると思いますが、その人が企業が待ち望んでいる人材として評価されるとは限りません。実際成績がよくても面接で落とされたりする人は企業が自らの力で問題を定めてその問題の解決策を探る能力がないと判断したからです。勉強は一人で一生懸命やればいい成績は取れると思いますが、研究は一人の力ではできないものです。研究には、問題の解決策を探るために、工夫を行いその成果を専門家による評価してもらう、その評価に基づいて工夫するといった無限ループが必要なために一人で出来るものではありません。
上で大学での研究は学生の能力を高める役割をすると話しました。それは実際どんな能力でしょうか。まず、自分の力で考えて物事を理解する能力です。2番目は理解したものに基づいて新しい発想をする能力です。3番目は自分の考えを人に説明する能力です。4番目は人の意見を聞く能力です。これらのほかにもたくさんあると思いますが、私はこれらがもっとも大事であり、特に学部生の研究においては3番と4番が一番大事だと思っています。
就職したい人も、進学したい人もこの能力さえ卒業研究を通して鍛えられていれば問題ないはずです。したがって本研究室では、ディスカッションを中心とする研究打ち合わせを頻繁に行っています。教員と学生のディスカッションを通してコミュニケーション能力を高める訓練を常に行っています。